多様化するイノベーション
イノベーション(innovation)を辞書(三省堂・新辞林)で引くと、最初に「技術革新・新機軸」とあり、次に「経済学者シュンペーターの用語で、経済成長の原動力となる革新、生産技術の革新、資源の開発、新消費財の導入、特定産業の構造の再組織などを目指す極めて広義な概念」とある。イノベーションを「技術革新」と翻訳したのは、1956年(昭和31年)の経済白書で、当時、日本は海外から技術導入を積極的に行わなければならない時代だったことを考えれば、非常に分かりやすく、パンチの効いた翻訳であった。
しかし、技術大国となった今日の日本では、シュンペーターの言う広義の概念の方がピンとくるのではないだろうか。例えばアマゾン・ドット・コムによるホームページとEメールを利用した新しい売り方や、すっかり定着したコンビニエンス・ストア、宅配便などの販売、物流について、イノベーション抜きに経営革新は語れない。
つまり、今日では、技術革新も多くのイノベーションの1つと考える方が理解しやすい。イノベーションを技術革新のみに限定して考えると、狭い視野でしかモノを見れなくなったり、考えられなくなったりする恐れがある。イノベーションを広く捉えることで、その延長線上にさまざまな社会的制度のイノベーションを想定することができ、そこにGeneral CTO(Chief Technology Officer)が活躍する場面も数限りなく生まれてくるのである。
”第三次産業革命”の現代における企業の在り方
約200年前の18世紀、第一次産業革命はイギリスで始まった。その起源は、ワットの蒸気機関であった。第二次産業革命は100年前の20世紀初頭に始まった。その起源は、電気、鉄、自動車、化学に関連する技術であるが、この技術に基づいて大規模な工場生産、企業体制が誕生した。
21世紀の今日は、まさに第三次産業革命の時代と言ってよいだろう。IT、バイオテクノロジー、ナノテクノロジー等のコア(中核)技術が、研究開発型企業の主役となっていく。ものづくり中心の大企業から新製品開発を行う”研究開発型企業”へと移り、工場生産はできる限りアウトソーシング(外製)していく体制を敷くことになる。
これからは、大企業・中小企業という規模での企業評価は薄れていき、新技術・製品開発力で企業が評価される時代となる。主役が、ものづくり中心の大企業から研究開発型企業に交代するということである。これはハイテク(先端技術)のみを指すのではなく、従来からの自社技術を他社の技術と融合させ、そこから新たな技術を生み出し、新製品開発に結びつけていくことも重要なポイントとなる。
General CTOの育成が急務
今まで培ってきた日本産業独特の、現場管理手法を中心にした日本型経営、そして先端技術中心の米国型経営、そのいずれでもない第三の技術経営とも言うべき「イノベーション・マネジメント」に取り組むことが日本企業にとって重要なことである。そのためには、技術者自らが、技術的側面と非技術的側面に対する多面的な視点を持つことが求められる。そして、旺盛な自立心と起業家精神(アントレプレナーシップ)を掲げて、常により高い目標に挑戦する、という真のプロフェッショナルとしての自覚が必要なのである。
技術要素と非技術要素を融合させ、継続的に新たな価値を創造していくことこそ、これからの日本産業に求められるMOT(技術革新)のあるべき姿なのではないだろうか。そしてGeneral CTOのリーダーシップで企業の優劣が明確となるだろう。
したがって、イノベーション・マネジメントが可能な人材の育成、すなわち、General CTOの育成が急務であり、それが21世紀の人材育成のキーポイントになる。日本型MOT教育の構築を急ぐ理由がそこにあるのである。
|